企業が派遣を使う際に最も踏みやすい法的な地雷:台湾労働基準法第17条の1
台湾の《労働基準法》第17条の1により、派遣先は派遣会社が労働者と労働契約を結ぶ前に、その派遣労働者を面接したり、特定の派遣労働者を指名したりしてはなりません。いわゆる「先に面接、後で付け替え」は違法です。違反すると9万~45万台湾ドルの過料が科され、会社名と代表者の氏名が公表されるうえ、期限内に改善しなければ違反のたびに処罰されます。さらに派遣労働者は、就労開始から90日以内であれば、書面で派遣先に直接の労働契約締結を求めることができます。
「転掛(籍の付け替え)」とは?企業がうっかりやってしまう理由
「転掛(名義替え)」とは、企業が自分で人を見つけ、面接して採用を決めた後に、派遣会社にその人を「掛けて」雇用してもらうことです。実質的には企業が人材を得ているのに、雇用主としての責任を派遣会社に移しているわけです。
こうしたことが起きるのは、たいてい悪意ではなく、プロセスの順序をよく考えていなかったためです。よくある状況は次のとおりです:
- 「まず面接してみて、合えばどの派遣会社を使うか決めよう」
- 「この人はうちが知っている人だから、派遣という形で採用してくれればいい」
- 「まずこちらで履歴書を見て何人か選ぶので、その人たちと契約してきてください」
この3つの言葉はどれも日常的に聞こえますが、すべて第17条の1の禁止範囲に入ります。
最悪でも罰金で済むと思っている人が多いのですが、この条文の本当の痛手は「会社名と代表者の氏名の公表」です。公表されるとネット上に残り、求職者、顧客、取引先の誰でも調べられるため、雇用主ブランドへのダメージは罰金そのものよりはるかに大きくなります。
さらに、派遣労働者は直接雇用を求めることができます。就労開始から90日以内に書面で申し出た場合、派遣先は意思表示の到達から10日以内に契約締結の協議をしなければなりません。期限内に協議しない、または協議が不成立の場合は、期間満了の翌日から双方の間に労働契約が成立したものとみなされ、労働条件は派遣先で働いていた期間の条件に準じます。つまり、その人がそのまま御社の正社員になり、しかも御社には選択の余地がない、ということです。
では、企業は人選の選考に関われるのか?
できます。ただし順序が大事です。決定的な違いは、あなたが関わるのが、派遣会社と労働者の「契約前」なのか、「契約後」なのかです。
| 方法 | リスク | |
|---|---|---|
| ❌ してはいけない | 企業が先に候補者を面接し、合格してから派遣会社にその人と契約してもらう | 第17条の1に直接違反 |
| ❌ してはいけない | 企業が「この人がほしい」と指名し、派遣会社にその人と契約させる | 「特定の派遣労働者の指定」にあたり、同じく違法 |
| ✔ 可 | 明確な職務仕様と能力要件を提示し、派遣会社が自ら募集・選考し、契約を締結する | 適法なやり方 |
| ✔ 可 | 派遣労働者の着任後、実際の業務内容について日常的な指揮・管理を行う | 派遣先はもともと指揮監督権を持っている |
言い換えれば、企業にできるのは仕様を明確にすることです。どんな能力、どんな経験、どんな資質が必要かをはっきりさせ、条件に合う人を派遣会社に探してもらう。自分で先に人を選ぶのではありません。
実際の案件で、この一言があまりに頻繁に出てくるので、今では最初の打ち合わせでこちらから注意を促しています:「まず私たちが面接して、通ったらどの派遣会社に所属させるか決めます」——この一言が出た時点で、案件全体のプロセスを設計し直す必要があります。
しかも話し合うのが遅くなるほど、調整のコストは高くなります。面接が半分進んでからプロセスを変える必要があるとわかったら、すでに接触した候補者への対応が非常に気まずくなります。だからこそ責任ある人材サービス会社は、契約後ではなく見積もりの段階でこの点をはっきり伝えるべきなのです。
見落とされがちな派遣コンプライアンスのポイント
労働災害の連帯責任
派遣労働者が労災に遭った場合、派遣先と派遣元事業者は連帯して補償責任を負います。つまり、労働契約が派遣会社と結ばれていても、作業現場の安全管理責任が免除されるわけではありません。現場の労働安全管理、教育訓練、保護具の整備は、引き続き派遣先が確実に実施しなければならないことです。
「長期で派遣を使うほうが安い」はたいてい錯覚
派遣のサービス費用は人月コストに反映されるため、長期的な総コストは直接雇用より高くなることが少なくありません。派遣の本当の価値は柔軟性にあります。プロジェクト型、季節性、繁忙期の人員調整や、長期的な需要が見えないときの緩衝材としての役割です。ポジションが長期的に存在することが確実なら、直接雇用のほうが通常は割安で、しかも人材の争奪が激しい市場では「正社員」であること自体が採用の武器になります。
求人広告に差別的な条件を書いてはいけない
正社員でも派遣でも、求人広告は台湾の《就業服務法》第5条の規制を受け、年齢、性別、国籍、婚姻などを理由に差別してはいけません。実務で最もよくあるのは、依頼書に「30歳以下に限る」と書くケースです。社内のやり取りなら意図は伝わるかもしれませんが、外部に掲載する求人に載った時点で違反になります。こうした条件は、実際に必要な能力や要件に置き換えてから公開すべきです。
企業のセルフチェック:5つの質問
- 派遣会社と契約する前に、候補者を直接面接したことがあるか?
- 特定の人を指名して、派遣会社に「籍だけ置いて」入れてもらったことはないか?
- 派遣スタッフの現場での安全衛生教育と保護具を、きちんと提供しているか?
- このポジションは本当に変動的な需要なのか、それとも実は長期固定の職なのか?
- 人材サービス会社に渡している依頼書に、年齢、性別、国籍で制限するような記述はありませんか?
1つでも「はい」があれば、採用を始める前に人材サービス会社とプロセスを改めて確認することをおすすめします。
よくある質問
「履歴書を見るだけ」でも違法になる?
法律が禁じているのは「当該派遣労働者を面接し、またはその他特定の派遣労働者を指定する行為」です。実務上、企業が履歴書から候補者を選び、特定の人物を名指しして派遣会社に契約させれば、「特定の派遣労働者の指定」に該当するおそれがあります。安全なやり方は、企業が職務仕様を提示し、派遣会社が募集・選考と契約締結を担うことです。個別の判断は具体的な事実によるため、プロセス設計の段階で専門家または主務官庁に相談することをおすすめします。
派遣社員は正社員になれる?
できます。実務上よくあることで、候補者を惹きつける重要な要素でもあります。ポイントは、正社員登用の条件と時期を最初にはっきり伝えておくこと(たとえば一定期間勤務し、成果が基準に達したら登用を検討する)、そして派遣期間満了時や双方合意の上で通常の手続きに沿って進めることです。第17-1条を回避するための迂回的な仕組みとして使ってはいけません。
どんなときに派遣が向いていて、どんなときに向いていない?
向いているケース:プロジェクト単位の人員、季節的な繁忙期、業務量が読めない時期の調整弁、早急に穴を埋める必要があるが長期的な需要は未定の場合。向いていないケース:長期的に存在することが確定している中核ポジション、特に専門職や技術職です。こうした職種に派遣を使っても総コストが安くなるとは限らず、人材争奪の市場では「正社員」であること自体が重要な採用の魅力になるため、派遣ではかえって候補者の受諾率が下がります。
依頼する派遣会社が合法かどうか、どう確認する?
相手に統一編号(法人番号)と就業服務許可証の番号を提示してもらい、統一編号で台湾経済部の商工登記公示資料検索システムを使って営業状況を照合しましょう。また、労働保険・健康保険の加入方法、労災保険、給与支払いの流れが書面ではっきりしているかも確認することをおすすめします。詳しい評価方法は 台湾のヘッドハンティング会社の選び方:実際に検証できる7つの判断基準 をご参照ください。
プロセスが固まる前に一度相談した方が手間が省けます
Step1ne(德仁管理顧問有限公司、統一番号 85046127、北市就服字第 0363 號)は、エグゼクティブ・ヘッドハンティング、正社員採用、人材派遣を提供しています。派遣と正社員のどちらにするか検討中なら、まずプロセスとリスクのポイントを一緒に整理し、そのうえで協業についてお話しします。
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